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会報136号(2016.2)9頁

 (公社)富山県鍼灸マッサージ師会による会報136号(2016.2)9頁です。

はり きゅう マッサージ 健康だよりNo8

富山支部学術講習会「湿潤治療」

 富山支部 林 博司

 平成27年10月11日(日)13:30〜15:30 富山県鍼灸マッサージ師会館3階ホールにて富山支部学術講習会が鍼灸昭和会の共催で開催されました。演題は「湿潤治療」で、講師は昨年に引き続き2度目のご登壇となる夏井睦先生でした。
 前回は演題が「糖質制限」で講演していただきましたが、そのご縁で糖質制限の提唱者である江部康二先生を招聘して、県民公開講座「炭水化物を減らして健康に!」を開催したところ大盛況でありました。
 糖質の過剰摂取が三大成人病の原因であり、人類にとって糖質は安定供給され便利でおいしくて救いの食物と考えられていましたが、これだけ過剰に依存してしまっては益になるより害作用の方が大きいようであります。ほとんどの糖質食品は農耕文明によってもたらされましたがわずか7千年程の歴史であり、身体はほとんど進化も適応もしていません。大きな食の変化に適応できない結果が現在のメタボの原因でした。江部先生と夏井先生は交友関係が深く、度々共同講演会を開催しておられます。

 今回の湿潤治療は夏井先生が創始者であり、練馬光が丘病院 傷のセンター長として日々臨床に携わっておられます。従来の治療法、即ち消毒して乾かす方法とは正反対の、傷は絶対に消毒しない・乾かさないが原則で簡単に痛くなく早く綺麗に治る治療法なのです。
 もともと傷口の消毒は化膿を防ぐ目的でありましたが、消毒すればするほど傷口の蛋白変性が生じ治癒が遅れ、傷が深くなりその結果として化膿する危険性が高くなっています。また傷口から出る浸出液は細胞成長因子と呼ばれる物質を含み、傷を治すための成分であるから乾かすと治癒の妨げとなります。
 現在でもまだまだ間違った消毒して乾かすという最悪の治療が多くの医療機関で行われている事実には驚きました。
 この新しい理論と治療法を学んで施術者自身のためにも患者のためにも賢く判断し選択しなければなりません。

 消毒の問題として我々施術者は鍼灸の施術前に施術部位を消毒用アルコールで消毒することが法規で定められております。しかし皮膚を消毒すれば皮膚細胞の蛋白変性が生じ、表皮のバリヤーを破壊し肌が荒れてまいります。施術器具の消毒と施術部位の洗浄は必要ですが施術部位の消毒には問題があることが解りました。しかしまだまだ学術的にも一般的にも理解がありませんから消毒しないと不衛生の誤解を招く恐れがあります。この理論と治療法が一日も早く普及してくれることを願っております。

講演される夏井先生
講演される夏井先生

受講風景
受講風景