(公社)富山県鍼灸マッサージ師会による会報136号(2016.2)8頁(後半)です。
富山支部 中野剛志
平成27年12月20日全日本鍼灸学会中部支部B講座を拝聴しました。テーマは「専門医と連携した鍼灸活用〜耳鳴り・めまい〜」講師は慶応義塾大学医学部神経内科非常勤講師 鳥海春樹先生です。前半で座学の講義、後半で実技供覧と大変内容の濃い講座でした。
鳥海先生は慶應義塾大学病院の神経内科で鍼外来を主宰され、専門医の診察と連携して主に片頭痛や筋緊張型頭痛などの慢性頭痛の治療にあたっていらっしゃいます。
お話しでは鍼灸とは体表面の凹凸が出ている部位をコリMAPと呼び、このコリMAPを解消・変化させる部位をツボ(経穴)と呼び、刺鍼によって解消する治療である。体表面の凹凸は日々変化するものであり、それを上手に解消するために体表面の変化に注目して、触診の技術向上と指頭感覚を磨くことが重要であると説かれました。
耳鳴りには内耳の異常だけではなく、中枢神経が関与していて、聴覚野が過敏になって起こることがあるそうです。耳介周辺や後頸部や側頸部のコリが耳鳴りを増悪させる原因ともなり得ますし、大脳皮質の受容体にまで悪い影響を与えるそうです。
実技供覧ではめまい持ちの参加者にモデルになっていただき、最初に肩背部を丁寧に触診され、的確にコリを見つけ、脊柱の際に刺鍼する技術は凄いなと思いました。上腕三角筋の中部線維付近のポイントと肺経の列缺に刺鍼して、側頸部のコリが消失したのには驚きました。
このように確かな技術と大学で素晴らしい研究実績を残されている先生ですが、気さくでとても親しみやすい方で、懇親会ではお酒を飲みながらとても楽しく談笑させていただきました。是非、第二弾もお呼びしたいですね。
日頃は脈診により手足のツボを使用して、全体の反応を見て治療をしていることが多いのですが、日々変化する体表面に触れて、ポイントを探し、的確に刺鍼する必要性を改めて思い知らされました。この経験則で培われたコリMAPは鍼灸の大きな財産だと思います。これからも日々精進して、今後の臨床に大いに役立てていきたいです。
講演される鳥海先生
鳥海先生の実技供覧