(公社)富山県鍼灸マッサージ師会による会報136号(2016.2)10頁です。
高岡支部 杉野 篤史
平成27年9月27日(日)、サンシップとやまにて(公社)富山県鍼灸マッサージ師会主催、第6回県民公開講座に出席致しました。講師は京都市の高雄病院理事長 江部康二先生です。江部先生の講演聴講の為、会場には約250名の方がお越しになられました。
記録にはっきり残る日本人最古の糖尿病患者・藤原道長の話から始まり、人類の進化の歴史と食事について興味深い講演でした。旧石器時代のヒトの虫歯率は0だったのに、縄文時代に入り多少の栗や木の実などを食べるようになって8%になり、農耕が始まると虫歯が16%にまで増加した話は、今回初めて聞きました。
食後高血糖の害や糖質制限の理論などの基礎的な所から「糖質制限しない(出来ない)人」は、どの様な人かとのお話に。糖質制限が出来ない人は「テレビの健康番組でああ言っていたから」「東大卒の先生がこう言っていたから」など、権威に弱いタイプの人だと。「ビールが好き」「甘いものが何よりも大事」という方も糖質制限は無理だと。例えば、ラカントSを使用したスイーツなども美味しいですが、いわゆる糖質依存症の状態になると、「血糖値は上がらないのは、たとえ甘くても脳が満足していない」のかと。
何かと悪者だと誤解されている「糖質」についても、決して悪くは無いと話された時は、会場にもどよめきが。富山では、お米も昆布も大好きという方が多いですが、「昆布でダシを取るのは良いけど、ダシを取った後の昆布には30%の糖質」だと言われ、再びどよめきが。
すでに糖尿病性腎症のある方へのアドバイスも、eGRFが60以上ある場合は全く問題無く、60以下の患者さんには相談の上慎重に指導していると。アメリカでは「蛋白質の制限は全く無意味」とまで言われ始めたそうですが、日本ではさすがに無理との事ですが、最新の医学を知らない医師は、「糖質制限をすると肝臓を悪くする!」と言われるそうです。高血糖が肝臓を悪くするエビデンスはありますが、糖質制限食自体が肝臓を悪くするエビデンスは無いようです。2015年の「日本人の食事摂取基準」にも掲載されているようです。
12歳で1型糖尿病を発症したバーンスタイン医師は、すでに「蛋白尿」が常時出るほど腎症が悪化していたにもかかわらず、数年で全く出ない段階まで回復し、80歳を超えた今でもご健在だそうです。何よりも肝臓に悪いのは、高血糖だそうです。
1型糖尿病で、「血糖値はコントロールしたいけれど太りたい」と質問された方に、江部先生は「脂ののった肉や魚など、上手に脂質を摂取されたら良い」との回答も。
実は、江部先生は最初から糖質制限を信じていらっしゃらなかったそうです。最初、先生のお兄様が糖質制限を始めた時、「こんなの効果あるわけないやろ。」という感じで、2年間傍観されておられたとか。ある時、重症ケトアシドーシスの患者が入院され、従来の糖尿病食で効果がみられず、ダメ元で糖質制限を試されたらすぐに血糖値が下がったのを見て驚かれたとか。江部先生のお話はユーモアいっぱいで楽しくご聴講が出来有難うございました。
江部される夏井先生
県民公開講座の受講者