ホーム会報>会報140号(2018.2)22頁

会報140号(2018.2)22頁

 (公社)富山県鍼灸マッサージ師会による会報140号(2018.2)22頁です。

全日本鍼灸学会学術大会(29年6月10日〜11日)に参加して

(砺波支部 熊野 知佳子)

 今回の東京大会は、かの、東京大学本郷キャンパスで開催されました。有名な安田講堂がある、あの「東大」に行ける! ワクワクしながら、土曜の早朝富山を出発、東京へ向けて車を走らせました。

 全日本の学術大会は、講演・シンポジウム・セミナー・ポスター発表・口演発表などが、大小10会場で同時進行的に行われます。聞いてみたいものが多く、時間帯ごとにどのプログラムを選択するかいつも悩むのですが、今回は東大で行われるということもあり、富山でもお馴染み、東大の粕谷大智先生が出演されるプログラムを中心に選択してみました。

 最も興味深かったのが、パネルディスカッション:腰部脊柱菅狭窄症の治療戦略〜鍼灸の可能性〜。まず外科医の高野裕一先生が薬物療法や手術療法について、運動療法を提唱きれている医師の松平浩先生は腰部脊柱菅狭窄症の病態に合わせた運動療法のポイントについて、明治鍼灸大学の井上基浩先生が腰部脊柱菅狭窄症に対する鍼灸治療〜臨床・基礎研究〜と題してこれまで発表されている鍼灸論文などを総括し、統計学専門の岡敬之先生が保存療法3群すなわち薬物療法・運動療法・鍼灸療法の短期的有効性を統計的に比較分析し、鍼灸が他療法より有意に改善したと発表されました

 腰部脊柱菅狭窄症は、治療に難渋することが少なくない疾患と思われますが、病態が神経根障害で的確な治療ができるならば、鍼灸治療はお勧めできる選択肢である。もちろんこれまでもそう考えて治療してきたし患者さんにも伝えてきたのですが、研究によって裏付けられたことでより自信をもって臨めるようになると感じました。

 とても印象的だったのは、医師のみなさんが率直に鍼灸の効果を認め、期待しておられることが伝わってきたことでした。鍼灸の学会という場でのリップサービスも含まれていたかも知れませんが、それにしても、整形外科の先生は特に鍼灸に厳しい目を向けられる方が多いと日頃感じているだけに、東大医学部の先生がこんなに鍼灸を認めておられることは、単純ですが驚きでした。それは粕谷先生をはじめ東大の鍼灸スタッフの方たちが、これまでの臨床や研究を通して医師や医療スタップの間に信頼を築いてこられたことの現れなのでしょう。私たち在野の鍼灸師も、努力次第では、身近な医師や医療者の依頼を得て鍼灸に期待を持ってもらえるはず、そうなれるようにしなければ、と気持ちが引き締まりました。

 このほか、抹消顔面性神経麻痺難治症例、不妊症・婦人科、腰下肢など、日頃の臨床で課題を感じているテーマを選んで講座をまわりました。市民公開講座、『脳の強化書』の加藤俊徳先生のお話「人は何歳でも成長できる〜脳貯金する生き方〜」は、ベストセラー作家らしい軽妙な語り口でとても楽しかったです。

 学会で県外へ出かけることは思い切りのいることではありますが、新しい考え方に出会えたり、自分の日常を確認できたり、思がいけない刺激を受けたりと、時間とお金をかける価値があると感じています。来年以降もまた、可能な限り参加したいと思っています。

学会参加者会場の安田講堂
学会参加者会場の安田講堂