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会報137号(2016.7)8頁

 (公社)富山県鍼灸マッサージ師会による会報137号(2016.7)8頁です。

第2回定期学術講習会「敗北の医学」の世紀を生きるために

 平成28年6月26日(日)会館3階ホールにて、公益財団法人 未来工学研究所の小野直哉先生による~「敗北の医学」の世紀を生きるために~と題した講演と、「21世紀の鍼灸とは」をテーマにしたワールドカフェin富山を指導していただきました。

 先ず講演ではかなりの資料に基づき明治初期から現在に至る医療の歴史の中で鍼灸按の位置を考察しました。
 近代国家建設のために明治政府は富国強兵・殖産興業の旗頭の下、強い兵士の養成と労働力確保を目的にドイツの行政を参考にして「医政」を発布し、近代西洋医学を導入しました。ために漢方(鍼灸按・湯液)は医療制度の枠から外れる運命を辿りだしました。
 富国強兵が達成された結果、益々増長し第二次世界大戦に突入し300万人の犠牲の末敗戦しGHQの支配下となりました。憲法を始め経済、農業、医療の改革の中で鍼灸按は禁止条例の憂き目に遭いながらも何とか今日まで命脈を保っております。
 1970年代以降、死因はそれまでの感染症から脳血管疾患、癌、心疾患等の生活習慣病へと変化してきました。21世紀に入り超高齢化・少子化社会を迎え、「治す医療」から「治らない医療」に移行し現代医学は行き詰まり混迷の状態にあります。

 これからは非効率的でありますが地域住民の日常生活を支える医療、介護、福祉サービス等の総合的ケアシステムによる居住地域や在宅などの生活者中心の「寄り添う医療」が求められております。自助、共助、互助、公助を基盤にした「地域包括ケアシステム」が模索されています。
 この包括的ケア・キュアはもともと鍼灸按が得意とするところであります。適応疾患、適応年齢の広さや資材や器具を必要としない素手に近い施術は簡易で安全安価であります。まさにこれから最も必要とされる医療です。
 従来我々は西洋医学に対してルサンチマンであり、何とか科学的に効果を立証し現代医療の分野に参入することが望みでありましたが、そのような科学化や標準化の努力から解放されて、等身大でできることを蓄積して患者に貢献出来れば幸いと感じました。

 ワールドカフェでは4人のグループに分かれて忌憚のない意見交換をし、三回メンバーを入れ替えて最後に振り返ってみたとき、最初のテーマに対して皆さんとの共有した意見から業界の現状や問題が浮かんでまいりました。初めて話す人もあり、楽しい交流会でした。この収録は次号に掲載予定です。

 (報告者 林 博司)

講演される小野先生
講演される小野先生

ワールドカフェの風景
ワールドカフェの風景